誰だって、最初は初心者です。
エンジンオイルの『10W-30』なんて意味が解らなくて当然です。
で、その暗号はなに?
オイルはどうやって選べば良いの?
そんな疑問を解消します。
- 謎の記号の意味
- 粘度の選び方
- JASO規格の意味
- API規格の意味
- ベースオイルの違い
こんな内容を知ってスッキリしよう。
オイル選びは難しくない。
バイクの指定オイル
バイクのマニュアルには、推奨のオイルが必ず記載されてます。
基本的には、マニュアルの推奨オイルを入れて置けば間違いない。
ちなみに、PCXのマニュアルにはこのように記載されてます。
- ウルトラE1
- JASO規格: MB
- SAE規格:10W-30
- API分類:SL級
この値をベースに気温や使い方でアレンジすれば良いけれど、
良く解らなければマニュアル指定を守った方がいい。
市販のオイルに掛かれている謎の記号を読み解いて、このマニュアルと照らし合わせます。
完全一致するオイルを使うのが一番安心。
オイルに掛かれている謎の記号
市販のエンジンオイルには、こんな暗号が記載されてます。
法則さえ判れば、読み解くのはカンタンです。
- ①ULTRA G2
- ②4CYCLE ENGINE OIL
- ③10W-30
- ④SL
- ⑤JASO MA
- ⑥SEMI-SYNCHETIC OIL
①ULTRA G2
ブランド名
ホンダの『ウルトラ ジーツー』という名前のエンジンオイル
ホンダのエンジンオイルは、G1、G2、G3、E1、S9などの変な名前がついている。
例えばカストロールは『POWER1 RACING 4T』なんてカッコイイ名前。
②4CYCLE ENGINE OIL
4サイクルエンジン用の
エンジンオイルだよ!
『2CYCLE ENJINE OIL』は2サイクル用なので、最近の4サイクルエンジンにいれたたダメ。
エンジンにダメージを与えるので、必ず『4CYCLE』を確認しよう。
③10W-30
オイルの粘度を示してます
ここから話がややこしくなります。
- 最初の『10』は低温時の粘度
- 後ろの『30』は高温時の粘度
10W-30なら、低温側は-25℃まで使えて高温側は硬くも無く柔らかくも無く。
日本自動車工業会によると、低温時の粘度の目安は、以下になってます。
- 0W:-35℃でクランキング可能
- 10W:-25℃で 〃
- 20W:-15℃で 〃
ということは、『0W-60』が最強か?
-35℃でも使えて、高温でもシャビシャビにならないからね。
けど、そんな簡単な話ではない。
60だと普通の使い方では硬すぎて燃費が悪くなるだけ
低温時の粘度
日本で使うなら、
10W(-25℃)で十分です
気温が最低何度でもエンジンスタート出来るか、を示してます。
正月の宗谷岬でもマイナス10℃程度。
-30℃なんて滅多にならないし、そんな気温の中バイクで走り出そうとは思わない。
粘度は高温時の粘度で選びます
よほど寒冷地に住んでいなければ、低温時の粘度は気にしなくてもイイ
小さければ小さいに越したことは無いけどね。
高温時の粘度
粘度は大きければ良い、小さければ良いというもので無いのが難しい
粘度が高ければ、高温でも油切れせずにエンジンを潤滑できるけど、それだけ硬いオイルなので燃費は悪くなる
粘度が低ければ、柔らかいのでエンジンがスムーズに回り燃費は良くなるけど、高温で持たない
エンジンを何処まで高温になるまで使うか、を示してます。
高温時の粘度は、気温や使い方、エンジンの状態で変わります。
基本ははマニュアルの指定粘度だけど、使い方でずらすのもあり。
PCX『10W-30』なら、30をベースにします。
- 夏に、エンジンが高温になるような走りをする
1つ粘度の高い『10W-40』を選んで高温でのオイル切れを防止 - 5万km以上乗ってエンジンもくたびれて来た
1つ粘度の高い『10W-40』を選んでオイル抜けを防止 - 飛ばさないけど、燃費が気になる
1つ粘度の低い『10W-20』を選んでオイル抵抗を減らす
(10W-20は流通してないので10W-30でOK!)
④SL
オイル性能のグレード
SL<SM<SN<SP の順番で高性能のオイルになる
アメリカ石油協会(American Petroleum Institute) が定めた石油に関する規格API分類の記号です。
オイル性能(酸化安定性、サビ・腐食・磨耗防止性、洗浄性、せん断安定性など)をグレード分けしています。
SL<SM<SN<SP の順番で高性能のオイルになる。
PCXで指定の『SL』は低グレード。
低グレードでもOKなので、財布に優しい。
⑤JASO MA
摩擦特性の指標
MB<MA2<MA1<MA の順で摩擦抵抗が高くなる
- MTバイクはMA
- スクーターはMB
日本自動車技術会規格(Japanese Automotive Standards Organization)は
公益社団法人自動車技術会(JSAE)が制定する工業規格。
バイクのJASOは、4段階で摩擦特性を分類している。
MB<MA2<MA1<MA の順で摩擦抵抗が高くなる。
- MTバイクは、MAグレード
マニュアルバイクは、クラッチもエンジンオイルを使ってます。
低摩擦のMBを使うとクラッチが滑るのでMA必須 - ATバイクは、MBグレード
スクーターはクラッチを潤滑しないので、低摩擦のMBグレードが使える
燃費アップが見込めます
PCXはもちろん低摩擦のMB推奨。
MTバイクにMBを入れるとクラッチが滑るのでNG!。
だけど、ATバイクにMAを入れても燃費が落ちるだけで大きな問題にはならない。
MTバイクで余ったオイルを活用してもいい。
⑥SEMI-SYNCHETIC OIL
ベースオイルの種類
MINERAL OIL < SEMI-SYNCHETIC OIL < SYNCHETIC OIL
オイルはベースオイルに色々な添加剤を加えて狙った性能を出します。
ベースオイルには3種類ある。
- 鉱物油(MINERAL OIL)
原油を精製して作ったオイル - 化学合成油(SYNCHETIC OIL)
人工的に生成したオイル
不純物が無いので高性能 - 部分合成油(SEMI-SYNCHETIC OIL)
鉱物油と化学合成油のブレンドオイル
コストと性能のバランスを取ったオイル
一般的に鉱物油は安くて、化学合成油は高価で高性能。
SSの高性能エンジンには化学合成油を入れたい。
だけど、クラシックバイクは鉱物油でも十分な性能なことが多い。
PCX指定のE1は、MB規格の鉱物油。
お財布に優しい。
PCXの標準オイルは『ウルトラE1』で鉱物油
化学合成油だと『ウルトラG3』になって約2倍の値段です
高性能で高価なオイルを入れるのと、安価なオイルを頻繁に交換するのとどちらが良いのか?
良く議論のテーブルに上がるけど、結論は出ません。
宗教なので、合い入れない。
基本的には、マニュアルに指定されているグレードを最低としよう。
財布に余裕があれば、上のクラスを試してみるのもいい。
たまに高価なオイルを入れると、バイクが軽くなった気がするけど
多分、フラシーボ。
鉱物油指定のバイクに化学合成油を入れても問題になる事はまず無いけれど、
逆は止めた方がいい。
高回転・高出力のバイクに鉱物油を入れるとオイルの性能が不足して100%の力が出せない。
エンジンにも優しくない。
オイルの交換頻度なら、ココ
ホンダ純正オイルの種類と適合
ホンダ純正オイルは、ホンダ車だけでなくどのメーカー車でも標準的に使える。
尖った特徴は無いけれど、確実に仕事をこなすので、おすすめです。
- 最初は、マニュアル指定のオイル
- ホンダ純正オイルでオイルの違いを試す
- モチュールなど、高級オイルを試す
この順番で、いろんなオイルをためして好みを見つけるのがおもしろい。
オーバースペックのオイルを使っても何の問題も無いけれど
バイクのジャンル・排気量によって、最適なオイルは変わってきます。
- MT用のMA規格は、ベーシックな鉱物油のG1~100%化学合成のG4
- スクーター用のMB規格は、化学合成油S9か鉱物油のE1
この表で選べば間違いない。
遊んでみるなら、1つ上のクラスのオイルを試してみてもイイ。
オイルフィルターの有無についてなら、ココ
車のオイルは、バイクに使えるのか?
- バイクのオイルは、4Lで4,000円~
- 車のオイルは、4Lで2,000円~
車のオイルの方が安い。それに種類も多い!
車向けのオイルを
バイクに使えないの?
- 車用とバイク用で何が違うのだろう?
- 車用をバイクに使うと、どうなるの?
そんな疑問も、起きるよね。
結論を先に行ってしまうと
- MTバイクは、車用オイルを使えない
- スクーターは、車用オイルを使える
MTバイクは、車用オイルを使えない
車は、エンジン潤滑とミッション潤滑が分かれれてる
エンジン潤滑に特化すれば良いので、低摩擦オイルが主流
一方、MTバイクはエンジン潤滑とミッション潤滑オイルを共用してる
低摩擦オイルを使うとクラッチが滑ってしまい、使えない
車のエンジンオイルは、超低粘度です。
『0W-20』なんてサラサラのオイルが普通に使われてます。
燃費をよくするためですね。
こんなオイルをMTバイクに入れたらクラッチが滑ってしまって、まともに走らない。
MTバイクは、車用オイルを使えない。
スクーターは、車用オイルを使える
スクーターにはクラッチ・有段変速機構がありません
だから、車用オイルが使える
スクーターの変速は、絵のようにウエイトローラーの遠心力で行ってます。
だから、エンジンオイルでクラッチが滑ることが無い。
なので、車用のエンジンオイルが使えます。
粘度は必ず守る
バイクのマニュアルで指定された粘度は必ず守ること
バイクは車より高回転を多用します。
車は普通、2,000~3,000回転程度だけど、バイクは4,000~5,000回転を普通に使います。
バイクの方が、オイルは過酷な環境に置かれる。
低粘度のオイルだと油面が切れてしまいエンジンが焼き付きかねない。
スクーターにもバイク用オイルがおすすめ
バイク用のオイルは、バイクでの使用環境を想定して開発されてる
出来れば、バイク用のオイルを使いたい
車用のオイルは、流通量が多いから価格もこなれてます。
バイク用のオイルと比べると安い場合多い。
使いたくなる気持ちは解るけど、バイク用のオイルを使った方が安心。
モチは餅屋です。
僅かな金額差で、バイクの性能が十分発揮できなかったら悲しい。
オイル量は正しく入れてる?
エンジンオイルの選び方 まとめ
エンジンにおいて、エンジンオイルの役割は大きい。
- 潤滑:ピストンとシリンダーが削れないように油膜を作る
- 洗浄:不純物を洗い流す
- 密封:シリンダーとピストンの間を埋めて爆発のエネルギーを逃がさない
- 防錆:金属が錆びるのを防ぐ
- 冷却:ピストンが焼き付かないように冷却
エンジンの性格に合わないエンジンオイルを入れるとエンジンの性能が発揮できません。
基本的には、マニュアル記載のオイルを入れよう。
馴れてきたら、アレンジして楽しむのも良いけれど、
粘度は変えない方がいい。
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