その店の名は四季。昔からあるラーメン店だ。
俺の名はヒデアキ。俺はその店の次男坊だ。
俺がバイクに乗り始めたのは今から20年前。その頃にはすでにラーメン店はそこにあった。爺ちゃんの代までは、代々、米や塩を売る店だったらしい。
隣は八百屋で、今も変わらず2つの店は並んでる。20年前と店構えもほとんど変わらない。

著者:あおいしか
12/11不思議の国ニッポンに生まれ、平和ボケして何となく生きてきて、バイク復帰も運命で決められていたとしか思えない今日この頃。
愛車のナンバーは3830。わかる人にはわかる数字。これからも平和ボケで生きていきたいです。
ボルティーとニンジャと神さま街道のラーメン店 四季

16歳でバイクに乗り始めてから、周りの仲間たちは峠を攻めに行くのがお決まりだった。
しかし俺はなぜか、知らない道をただただ走り続けるのが好きだった。
その頃の愛車はスズキのボルティー。当時の俺は金が無かったし、走れれば何でもいいと思ってた。だから、遠くへ行けそうなバイクの中で一番安かったボルティーの中古を選んだ。
ボルティーと過ごした高校時代

身長がそれほど高くない俺には、低い車体と軽さがちょうど良かったし、タンクは12リットルと長距離にも向いていた。シンプルでレトロな見た目も気に入った。
仲間たちはカウル付きの、いかにも走り屋っぽいバイクに乗っていた。だから、ボルティーのことを、オッサンぽいとか、女子向きだとか言うヤツもいた。
勉強そっちのけで、ボルティーで走ってばかりいた高校時代が終わろうとする頃。この先どうするのかと学校や親に問われた。
日本には知らない道がまだまだたくさんある。生きてるうちに全部走れるだろうか。日頃からそんなことを考えてた俺は、答えを出した。
長距離トラックドライバーになる。そうすれば、少なくとも全国の主要道くらいは走れるだろう。
学校も親も反対することなく、俺の進路は決まった。地元の大手運送会社だ。入社後、会社で自動車免許を取らせてもらった。
実家のラーメン店は、兄が継ぐことになっていた。小さな店だから、俺の出番はない。その代わり、どう生きてもいいという自由があった。
兄は酒を飲むと、たまにこう言った。お前はいいよな、自由で。俺は声に出さずに心の中で言った。俺も、このラーメン店、好きなんだけどな。
ラーメンの種類は3つ。醤油、塩、味噌。それだけだ。餃子もチャーハンも作らない。
だけど、地元の人は毎週のように来てくれる。時々、関西や九州などから来るお客さんもいる。わざわざ探して来るようだ。
醤油は地元で作られたもの、塩は三陸の塩、味噌は仙台味噌を使う。それが、この店のこだわりだ。麺には秘密があって、さらに北の米どころで作られた米粉が使われている。
神さま街道とカワサキ ZZR1100(Ninja ZX-11)

道路を走ることが生きがいのような俺は、入社してからあっという間に数年が過ぎた。社長の勧めと俺自身の希望で、大型トラック免許を取った。
社長は、真面目に働いてくれてるからと、俺専用のトラックの新車を用意してくれた。すげーかっこいいデカいトラックだ。昔気質の社長は、無線も付けてくれた。
長距離の仕事を続けるうちに、無線仲間から日本の道路にまつわる都市伝説の話題を聞くことも増えた。
あそこのトンネルには、今でもお化けが出るから気をつけろとか。峠で美人がヒッチハイクしてたら止まるなとか。
その中で気になる話題があった。日本には、神さま街道といわれる道路がいくつかある。その道は、昔から大事な神さまのいる場所を繋いでいるという。
一般人は誰も知らなくて、特別に選ばれた者だけがその秘密を知るのだそうだ。その道沿いには、神さまに縁のある家が、その道を代々守り続けているのだとか。
そういえば、社長が俺の大型免許取得祝いの飲み会で、酔った勢いで妙なことを呟いた。
お前の家のラーメン店と俺の会社がある国道はな、神さまの通り道なんだ。知ってる人間はあんまりいないけどな。誰にも言うなよ。と、それだけ言って、あとは何も教えてくれなかった。
世の中がドライバー不足で大変なことになっているらしく、俺もかなり忙しくなった。とはいえ、長距離を走ると、まとめて休みが取れる。
真面目に働いてると、かなり稼ぎもいい。貯金も随分貯まった。休みのたびにボルティーには乗ってたが、バイク屋に寄ったとき、デカいバイクに一目惚れしてしまった。
カワサキ ZZR1100。メタリックオパールシルバー×メタリックソニックブルー。美しいブルーの車体は、かなりの存在感を誇っていた。世界最速の市販車という称号を持ったバイクだ。
シンプルなレトロバイクが好みだと自分では思ってたが、心の奥では仲間たちのバイクに憧れてたのかもしれない。
俺は、即決でZZR1100を買った。もちろん、現金いっかつ払いだ。大型免許は高校卒業後に暇だったから、取得済みだ。
次のまとまった休みには、慣らしを兼ねて、一気に青森まで高速道路を走ってみようと思う。
最近気になることといえば、隣の八百屋に配達に来る農家の女の子のこと。あと、近所の空き家が増えて、他所の家族が住み始めたこと。かなりの金持ちのようだ。
気がつくと、この街の様子もどんどん変わってきた。
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