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第27章:出会い系とオートバイ

第27話 あおいしか バイク女子

出会い系とオートバイの関係は、けっこう古い。

例えば、昭和のライダー達のバイブルとも言える、片岡義男の「彼のオートバイ彼女の島」。

主人公のコオが、ミーヨと出会う前に付き合っていた彼女との出会いは、雑誌の投稿欄だ。

私をバイクに乗せて!という彼女に、いいよ!と名乗りを上げたコオ。

そこから交際が始まった。


著者プロフィール

名前:みどりのシカ

女性だけどバイクに魅せられた。20歳で初めて自転車に乗れるようになり、その2年後に中型二輪免許取得。きっかけは片岡義男「幸せは白いTシャツ」と三好礼子氏との出会い。

20代の頃、ほぼ毎日オートバイに乗っていました。遠くは四国、沖縄まで旅をしました。

わけあってオートバイを手放してから、かなりの年月が経過。また乗りたい気持ちを抱えてジタバタしています。






出会い系とオートバイ 二兎を追うもの?

中古バイク探しで行き詰まり、バイク置き場が無いことで希望が薄れ、1人でバイクリターンを果たす自信が無くなった私。

しかし、そこで諦めるヤワな根性の持ち主ではない。

同じ頃、メル友から、こんな話を知らされた。



うちの職場、出会い系でカップルになった人多いんだよね~

みどちゃんもやってみたら?

え?出会い系?



いかがわしいその響きに、私は正直嫌悪感を覚えていた。

でも、時間が経つにつれ、ある考えが浮かんだのだ。

それは、まったく好都合で良いアイディアにしか思えなかった。

バイク乗りのボーイフレンドをつくればいんじゃね?

アドバイスも貰えるし、ツーリングも一緒に行けるし、タチゴケしても助けてもらえるし、あわよくばガレージも借りられるかも?

ついでに恋愛してもいいんだし、縁があったら結婚しちゃえば生活費に困らない。




Ret’s Try

さっそくネットで情報を集め、結婚も視野に入れているシニア向けのまじめそうな出会い系サイトに登録してみることにした。

自己紹介に、こんな言葉を綴って。

若い頃、オートバイに乗っていました。還暦を過ぎて、人生最後にまた乗りたいと思い始めました。

でも、1人では不安。

いろいろアドバイスをして下さる、バイク乗りの友達がほしいです。

バイク乗りの方、よろしくお願いします!





まあ、出会い系とはそういうものだと後から知ったのだが、予想に反して希望者からの申し出がけっこう入った。

しかし、大半がバイクなんて関係なさそうな男性ばかり。

ただ、バイクに興味あります、バイクいいですね、そんな調子だ。

こちらがはっきりと希望を告げているにもかかわらず。読解力が無いのか?

その多くが、女なら年上でも誰でも構わない、当たって砕けろ系。それも後から気付いたことだ。

なにしろ、私は見合いしたこともなければ、モテたこともない。

だから、私に興味があり、付き合いたいと嘘でも言ってくる男性が複数いることに、しばらく舞い上がっていた。

複数の人と同時期に連絡メールのやりとりをする事に、大忙しの日々が続く。そして、なぜかとても楽しかった。






1st

お付き合いするには遠すぎるから、アドバイスだけでいいかと言う、紳士的なバイク乗りがいた。

バイクに乗った写真もとてもカッコよかった。丁寧なアドバイスを下さり、その人はサラリと消えた。





2nd

Kawasakiを何台も所有するバリバリのバイク乗りがいた。その人も、遠い場所に住む人だった。年齢は1つ上。

バイク好きなんですか?

とのKawasaki乗りらしい朴訥な問いから始まり、メールでたくさん会話した。

バイクの話に終始して、本題にはなかなかならない。

春になったら、そちらに行って私はレンタルバイクを借りるので、一緒に走っていただけませんか?とメールしてみた。

まだ寒いですよ、とあっさりした返事がきた。

なかば諦めた頃、GWか、お盆にそちらへ行こうと思います。車とバイクなら、どちらがいいですか?と、連絡がきた。

会ってみたいとほのかに思っていた私は、舞い上がった。

しかし、思いに反してというか、あまりにも正直な答えを送信した自分がいた。

バイクが良いです!

でも、バイクのタンデムが苦手です。

あと、車の助手席はもっと苦手です。

その後、メールは途絶えた。




3rd

最後に、地元の70代のバイク乗りと、同じ年齢の自称バイク乗りからのアピールがきた。

70代はなかば強引で、こちらの意見を聞き入れない。そして、メールの中で、必ず金が無いアピールをしてくる。



これまた後日知ったことだが、女性が出会い系に登録する目的のひとつが、お金目当てだそうだ。

私も似たようなものだが。

女性の多くが男性に期待するのは、安定した生活を送れること。

わからなくはない。私もちらと考えた。

そして、男性の目的の大半は、アレだ。

中には真面目に結婚相手を探している人もいるだろうが、そう思える男性は1人もいなかった。

いや、逃したKawasakiさんは、そうだったかも?





Final

話を戻すと、最後に1人、同年齢の自称バイク乗りとメールのやり取り後、車で中古バイク屋を回ってみましょうという話に、ひっかかった。

まあ、文面も写真の顔もまじめそうだし、何よりバイク屋巡りには行きたかったから、気軽にOKした。

さて、当日。駅のパーキングで待っていたのは、天井の低い、狭い某車種の運転席にうつ伏せる疲れ果てた様子の男性。

え?写真と違う。



仕方なく助手席に乗る。とにかく、目的を遂行するしかない。

事前に知らせていた中古バイクショップ3店舗と、自称バイク乗りの勧めるバイクショップ2店舗を回り終えた。

目当ての250TRにも、実際にまたがってみる事ができた。

しかし、そこにあったホワイトとグリーンの2台は、目にも心にも魅力的に映らなかった。

だめか・・・


ついでに立ち寄ってもらった旧車専門のバイクショップには、往年のスターとも言える、カッコいいオートバイがギラギラと存在感を放っていた。

もちろん、お値段は私の年収を何倍も超えている。

はぁ、とため息をつき、バイクショップ巡り終了。

じゃあ、お茶でも、食事でも、という言葉を期待したが、他にどこか行きたい所は?との言葉。

行きたかった海岸沿いのカフェをリクエストしたが、閉店間際でテイクアウトのみ。防潮堤でグイッと飲んで車で移動。

とりあえず自宅方面へ車を向けてもらう。

その時の私の頭の中には、寿司が泳いでいた。

「あそこに見えているホテルの最上階には、大きなお風呂があるんだそうです」

しかし、食事の話どころか、話題はいきなりバイパス沿いのラブホの話となる。

「あー、やはり、目的はそうなんですか?」

憤慨した私は、空腹のまま、そこから一番近い駅で車を降りた。




しつこく迫られなかっただけ幸いだが、気分は最悪。

目当てのバイクとの縁が無かったこともあり、悲しい気持ちで電車に乗った。

しかし、利用したのはこちらだ。何がどうあれ、目当てのバイクを見ること、跨る事ができたのだから、作戦は成功だ。

そして、欲しいのは、ボーイフレンドでも、250TRでもないかもしれない、と答えが出た。




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