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シーズン2第13章:骨折とバイク先生と回遊魚と

Season 2

久しぶりにバイクを手に入れた私は、念願の滝桜お花見ツーリングに出かけた。

しかし、到着早々にバイクを倒してシフトペダルを曲げてしまい、走行不能となってしまった。

一瞬のミスを悔やみつつ、レッカー車を呼び修理工場にバイクを送り出した。




バイクの下敷きになった足が痛かったけど、滝桜の美しさを堪能できたので良しとしよう。



バイクを見送り、一人取り残された私の、後日談。



当日の経緯は、ここ


とうとう自分のバイクを所有して、乗りたい時に乗れるようになった 長年漠然と抱えてきた思いが、実現したのだ

シーズン2は、より遠くへ行くことよりも、無理なく少しずつ カッコつけではなく、ゆっくり確実丁寧に走ることを大切にしよう

みどりのシカ




骨折とバイク先生と回遊魚と

骨折とバイク先生と回遊魚と

バイクをレッカー車に託し、帰路は公共交通機関を利用することにした。

桜のシーズンだけ走っているシャトルバスがあって、助かった。

そうでなければ、タクシーか徒歩で三春駅まで行かなければならなかったから。

歩けるとはいえ、足はやはりけっこう痛い。

打撲ならシップを貼ってなんとかしのぐしかない。

しかし、市販シップより病院でもらう保険適用のシップのほうが安くて効く。

だからシップをもらうため病院に行こうと決め、病院を探すことにした。

電車の中、スマホで当日やっている自宅近くの整形外科を探したが、めぼしい病院は見つからなかった。

仕方なく翌日の仕事を休む連絡をし、以前世話になった診療所に行くことに決めた。


バイク先生から骨折宣言

バイク先生から骨折宣言



その診療所にはバイク乗りの先生が居る。

数年前、レンタルバイクの下敷きになった時に世話になり、その折りに先生もバイク乗りであることを聞いていた。





ずいぶん久しぶりだね。どうしました?




バイクが倒れて足に乗っかったんです。



何乗ってるの?



カワサキの250TRというやつです。



俺は、カワサキだけ乗ったことない。





あー、折るてるよ。

レントゲンを見ながら、あきれ顔でバイク先生は言った。





え、・・・



3本折れてるよ。

安静ね。仕事は出来ないね。

しゃがんだりするの無理でしょう。

寝るときは足を心臓より上に上げてね。




はい・・・

まさか折れているとは思わなかった。

軽い絶望感に苛まれた。


じゃ、電気かけて。また来週ね。

シップは効かないから、いらないね。




シップもギブスも何も無し。

シップをもらいに行ったのだけどね。



保険処理

バイク購入時に、言われるがままバイク保険に入っておいたのが功を奏した。

病院から帰ってすぐ保険会社に報告した。

骨折と告げると、電話の向こうのオペレーターの声のトーンが心なしか落ちたように聞こえた。




保険が適用されると告げられ、後悔ばかりだった私の気持ちは、ちょっと明るくなった。




安静にできない回遊魚

安静にできない回遊魚

メインのパートは1ヶ月休みを貰った。

しかしその間 何もせずに狭い部屋にいられるわけがない。

私は止まると息が詰まる回遊魚なのだ。



自転車で近くの公園へ花見、送迎バスで日帰り温泉、図書館、食料買い出し、友達とお茶、等など。

できる限り歩く距離を短くして、毎日出かけた。

だから、安静にしていたとは言えない。




翌週。

こんにちは。



レントゲンを見ながら、不機嫌そうな顔で先生はこう言った。

あー、動いたでしょ。

ずれると激痛だよって言ったよね?




はあ、あまり痛くなかったので・・・




うーむ。

まあ、そうだよな。

先生は、しばし沈黙したあと、脈略なしに唐突にこう言った。

バイク乗りたい?


え、・・・

なぜだか私は、乗りたいです!

と即答できなかった。

次の回も、問診の途中で、先生は唐突に言った。

バイク乗りたい?

やはり、私は即答できなかった。

もしかしたら、バイクに乗りたいのは先生なのでは?と思い至った。


バイク先生

バイク先生

街なかのビルの中、広いとは言えない診療所。

朝早くから先着順で名前を書く。定員に達し次第締め切りだ。

無骨だが身内のような親しみやすさと、簡潔で適切な診療のためか、かなりの人気だ。

カウンターの受け付けが開始される頃には、すでに定員に達していることもある。

かなりつらそうなお年寄りも、我慢強く、じっと順番を待っている。

先生の診療は、1日1箇所、そんな感じだ。

いま、どこが一番痛い?と聞く。

先生のホームぺージには、患者さん全てを真剣に観ようとしてきて、自分が壊れてしまったから、やむなく人数制限をさせていただきますと綴ってある。

それを見て、レンタルバイクの下敷きになったおり、この先生の診療所に行こうと決めた。


ここまで正直な医者はなかなかいない。

人柄がもろに滲み出ている。



あー、余計なとこに骨出来てるよ。

レントゲンを見ながら先生は言った。

足の中指につながる甲の細い骨の両側に骨らしきものがくっついている。

だから、動かないように言ったのに。

まあ、足だからいいか。


え、足だから?

何がいい?のか私にはわからなかった。





骨折からの復帰

骨折からの復帰

今日で終わりね、唐突に先生は言った。

え、終わりですか?

電気も?



そう。



途端に寂しい気持ちが込み上げ、帰り道も涙がにじんでこぼれそうになりながら、カフェへ向かった。

何だろう、この寂しさは。

病院嫌いの私だから、開放されてせいせいするはずなのに。

問診の、ほんの一瞬、バイクの話題になると心躍る。

ふと困惑顔が笑顔に変わる。

そんな感じもしていたからかな。


身近にバイクの話ができる人が、いまの私にはいない。

唯一、xの日本全国のフォロワーさんたちと繋がって呟きあうくらいか。

とてもありがたい存在だ。


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