ここからは、還暦をいくつか過ぎて25年ぶりに突如としてバイク復帰した、今現在の私に至るまでの出来事について綴っていこう。
リターンライダーとは、仕事や子育てが落ち着いてお金にも時間にもゆとりが出てきた40代~50代くらいの人が、再びバイクに乗り始める、そんなイメージかと思う。
しかし、私には時間的なゆとりは少しあるけど、バイクを買うほどのお金の余裕はない。ずいぶん昔に離婚した後、生活するのが精いっぱい、そんな日々を何十年も送ってきた。
なぜ、そんな私がもう一度バイクに乗れるようになったのか。これまでの私を振り返ってみようか。
著者プロフィール
名前:みどりのシカ
女性だけどバイクに魅せられた。20歳で初めて自転車に乗れるようになり、その2年後に中型二輪免許取得。きっかけは片岡義男「幸せは白いTシャツ」と三好礼子氏との出会い。
20代の頃、ほぼ毎日オートバイに乗っていました。遠くは四国、沖縄まで旅をしました。わけあってオートバイを手放してから、かなりの年月が経過。
けれど幸運なことに、いきなりバイク復帰しました。25年ぶりの相棒は、KAWASAKI 250TR。愛称をティーダと名付けました。ただいま、自分慣らし中です。
夢はくすぶり続け、いきなりハーレー試乗
離婚後、楽しい1人暮らしもつかの間。つらい失恋があったり、生活苦が長い年月続くことになった。
普通なら生活維持のために、まともな職業について必死に頑張るのが離婚女子の常識かもしれない。しかし、私はたまたま特殊な仕事を自由にマイペースにやっていたため、一般的な職業に就くのが困難だった。
結婚していた頃から縁のあった工芸品作りの手伝いを、自宅で細々と続けながら質素に生活していたのだ。
突然その仕事を失ってから、適当なパートやバイトで食いつないでいた。最後の愛車、TT-250を手放したのもその頃だ。
雌伏の時期
失恋でやせ細り、生活にも疲れ果て、夢も希望もない、そんな時期を少し過ぎて気持ちが前向きになってきた頃のこと。
心の奥でくすぶり続けていた夢が、ひょっこり顔を出した。
おまけに、頭の中に何気なくメモしておいた情報も思い出した。
夢を実現できる小さなチャンスが、ふいに訪れた。あまり乗らなくなった最後のバイクを手放してから、5年以上経った頃だろうか。
くすぶり続けていた夢は、ハーレー
ひとりで行く勇気がなかったから、バイクに興味のない友人に付き添ってもらい、私はその場所へドキドキしながら出かけた。
突如として思いつき、一大決心して夢の実現を決行したのだ。人生が終わる前に、どうしても実現したかったから。しかも、交通費以外のお金はかからない。
場所は、東京の昭島あたりだったと思うが、いま調べてもそれらしき情報が出てこない。その頃、そこにはハーレーダビッドソンのショップと広い試乗コースがあったのだ。
私の頭にメモされていた情報によると、女性でも、バイクに慣れていなくても、免許が無くても(たぶん大型のこと)気軽に試乗できます。しっかりサポートしますので、ぜひおいで下さい。
そんな広告を目にしてから、心にしっかりメモしておいた。いつかそこへ行ってみよう、そんな思いをずっと温めてきた。
なぜなら、バイクに乗り始めた頃の私の目標が、最終的にはカワサキの大型車かハーレーに乗ることだったから。
それはいつしか、目標ではなく一生叶うことのない夢になってしまったけど。
しかし、夢を実現せずに生涯を終えることに、とても抵抗を感じていたのも事実だ。
いきなりハーレー試乗
緊張と大きな不安を抱えたまま、ショップの受付へ向かった。愛想のいい気さくな女性に、試乗したいと伝える。
書類を書き、中型免許であることを伝え、試乗の場所へ向かう。やけにあっさり話が進んだ。
本当に大丈夫なの?
バイクを所有していたのは15年か、20年か。
少なくとも10年は毎日のように乗っていたとはいえ、3台乗り継いだバイクはすべてオフロード車。
しかも250㏄以下。
そんな私がいきなりハーレーに乗れるのか?
私はその問題を頭から追い出し、広告主に委ねた。
女性でも、免許なしでも、慣れていなくても・・・と広告に書いてあったのだから。
いざ、試乗。
ハーレーの中では小ぶりな車種を勧められる。
当時憧れていたのは、たぶんファットボーイだったような気がするが、いざ乗ったバイクが何という車種なのか記憶にない。
インストラクターの男性が、ものすごく簡単に説明してくれたが、シフトチェンジが普通のバイクと違うようだ。
説明を終えると、容赦なくコースを先導するためのバイクにまたがり、エンジンスタートしてスタンバっている。
乗れた
無謀な私は、目の前のハーレーにまたがりエンジンをスタートさせる。
先導車が走り出す。えっ、いきなりかい!と思って慌てる私を差し置いて、私の足と手が動き、バイクが走りだす。
夢うつつ状態で、私は約5分程度の試乗コースを無事走り通し、元の場所に戻ってきた。愛車でさえ躊躇っていたUターンも何とかこなした。
立ち止まったらコケると思ったのか、先導車は一時停止からの左折を無視して低速で走り通した。おかげで、立ちごけも避けられたのだろう。
「乗れたじゃないですか!」
とインストラクターは言ったが、乗れなかったらどうなっていたと言うのだろう。
コケても当然、それが試乗なのか?
しかし、その言葉と、実際に乗れたことにいい気になった私は、もう一台乗せて欲しいと無理にお願いする。
2台目ハーレー試乗
車体の大きな、いかにもハーレーらしいバイクを選び、またもや試乗コースを無事に走り通して戻ってきた。
一台目の場合と違っていたのは、戻ってきた場所にスタッフ数名と受付の女性が慌てて駆けつけてきたことだ。
停車しようとした瞬間に、何人ものスタッフがバイクを支えに来た。皆慌てた様子だった。
ハーレーが倒れたら
それでも私は怯まなかった。最後に「倒れたらどうやって起こすのですか」と質問した。
インストラクターはあっさりとそこにあったハーレーをシートの上に倒し、あっけなく起こす様子を見せてくれた。
驚く私に、得意げに説明をしてくれた。その通りに私もやってみたら、ほぼ難なく起こすことができた。
止まった時が動き出す
そうして感動の一日は終わった。
友人がしっかり撮影してくれた写真を何度も見直してはニヤニヤと過ごす日々が続く。
達成感に満たされ、私のバイクへの拘りも、これでほんとうに終わったと思った。
ハーレーは、日本にいる限り私には必要と思えるバイクではないと感じた。
大きすぎる、重すぎる、すり抜けは無理そうだ、高速道路以外はしんどそうだ、何よりお金がかかりすぎる、
私には不釣り合いだ。
反面、意外に乗りやすい、そうも感じた。なにしろ、Uターンができたのだから。
ハーレーに乗る、その夢が実現したのだから、もう思い残すことは無い。
これからは、バイクのことなど考えずに生きていく。
そう思ったのは、気のせいだったらしい。
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