今日の仕事はつらかった〜♪
その歌詞の通り、私は日々の仕事がつらい。子供の頃から反抗心もなく、欲もさほどない。いわゆるレールの上を素直に歩んできた。
一流ではないが、地元の大学を順調に卒業し、就職先として当時はまだ人気のあった教師になった。専門が工学系だったから、工業高校だ。
たまたま採用されたのが私立高校だったから、転勤や同僚の異動はほとんどない。春にいきなり転勤を命じられる大変さはないが、変わり映えのしない環境は時に良し悪しだ。

著者:あおいしか
12/11不思議の国ニッポンに生まれ、平和ボケして何となく生きてきて、バイク復帰も運命で決められていたとしか思えない今日この頃。
愛車のナンバーは3830。わかる人にはわかる数字。これからも平和ボケで生きていきたいです。
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虐めは無いものの、教師の間には派閥があり、何かとくだらない揉め事が絶えない。
何かあるたびに校長に報告するのが、主任である私の役割だ。いわゆる中間管理職というやつで、上と下の板挟みでどちらからも責められる損な役割りだ。
生徒たちは工業高校にありがちな、やんちゃな男子が確かに多い。だが、どの生徒も技術の習得には熱心で、反抗的な態度で悪たれをつきながらも、講義は真面目に聞いていたりする。
近づいてきて今度は何の文句かと身構えていると、講義内容の深い質問だったりする。だらけた教師たちに比べると、まったく可愛いやつらだと私には思えている。
今日の仕事はつらかった〜♪
それでも、様々な問題で毎日ストレスに押しつぶされそうになる。こなしきれず、残業も強いられる。
おまけに、私立独特のゆるい空気の中で、問題に真摯に向き合おうとする者は少ない。私の味方はほぼ皆無だ。
そんな風だから、やっと帰宅できる時には、心も身体もぐったりだ。バイクにまたがり、のろのろと走り出すと、無意識に愛唱歌が頭に流れる。
今日の仕事はつらかった〜♪
愛唱歌とは言っても、すべて正確に歌えるわけではない。同じ部分を、壊れたレコードプレーヤーのようにひたすら繰り返すだけだ。
スズキ アドレス125

そんな私にも、救いがないわけではない。温かい家庭と、通勤の足であるスズキのバイク、アドレス125がある。
SUZUKIのホームページでは「都会をスマートに駆け抜ける、軽量なシャシー設計」と紹介されている。フロント、リアともに安全性の高いサスペンションを採用。コンパクトで軽量な空冷エンジンを搭載し、低~中回転域を重視した出力特性で、快適な街乗りだ。
都会を颯爽と走ることを夢見て生産ラインを後にしたけれど、残念ながら田舎町のくたびれた中年教師のところへ来てしまったアドレス125。
私は、真面目なカタブツと人から言われている。そんな自分のキャラに合わないから、人前で口にしたことはないが、密かに愛車をアドちゃんと呼んでいる。
アドちゃんは、きれいなカーブを描くコンパクトなデザインの割に、渋いダークブルーの車体でクールな雰囲気をまとっている。
私の唯一の味方であり、相棒だ。
家族は私にとって守るべき存在だから、味方ではあるけど相棒とは言えない。
山谷ブルースの一節を脳内再生しながら、アクセルをほどよく空ける。いつもの通勤路を走る。自分で言うのも何だけど、まじめな性格だから、制限速度厳守だ。
思うのだが、制限速度は悪ではない。それぞれの道の条件に合った、快適に安全に走れる速度だと私は思う。
愛唱歌と同様に古い言葉だが「そんなに急いでどこへ行く」。私のアドレスをガンガン追い抜いていく車や原付バイクに脅威を感じながら、口先で呟く。
ON/OFF切り替えマシン アドレス125

職場から信号を3つくらい過ぎると、職場のストレスは徐々に解消されていくのか、今日の仕事はつらかった〜と、気持ちよく小声に出して歌うようになる。
気分も晴れて、歌詞とは裏腹にアドレスでのんびり走る風の心地良さに気づく。自宅までの中間には広い川を渡る赤い橋がある。橋の真ん中でチラと川の流れを見下ろすのがお決まりだ。
日没が遅い夏までの季節には、残業を早くきり上げるとキラキラと光る川の流れが見える。その瞬間に、私の脳内は完全にOFFモードに切り替わる。
温かい家庭の食卓を思い浮かべる。
今夜の晩飯は何だろう。
腹減ったなあ。
手料理を自慢気に説明する愛妻の顔と、スプーンを振り回してご飯を待つ息子の姿が思い浮かぶ。
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