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第22章:その後のバイク女子 いきなり大人のバイクスクール

大人のバイクスクール バイク女子

誰もが頭の中に引き出しを持っていて、大切な情報、いつか役立つであろう情報をストックしているものだ。

その中のひとつ、

いつ役に立つのかわからない、だけどいつかきっと実現したい

そんな情報がふいに浮上した。



生活破綻して逃げ戻ってきた古郷には、あのSUGOがある。

何気なくWebサイトの情報を見ていたら、ちょうど「大人のバイクレッスン」の募集記事が出ていた。

ずっと頭の中に記憶していて、いつか参加したいと思っていたバイクスクールだ。

気力体力も戻りつつあり、パート仕事などで貯金もわずかながら有ったので、迷わず申し込みをした。



著者プロフィール

名前:みどりのシカ

女性だけどバイクに魅せられた。20歳で初めて自転車に乗れるようになり、その2年後に中型二輪免許取得。きっかけは片岡義男「幸せは白いTシャツ」と三好礼子氏との出会い。

20代の頃、ほぼ毎日オートバイに乗っていました。遠くは四国、沖縄まで旅をしました。わけあってオートバイを手放してから、かなりの年月が経過。
けれど幸運なことに、いきなりバイク復帰しました。25年ぶりの相棒は、KAWASAKI 250TR。愛称をティーダと名付けました。ただいま、自分慣らし中です。




その後のバイク女子 いきなり大人のバイクスクール

その後のバイク女子 いきなり大人のバイクスクール

問題は、SUGOまでどうやって行くかだ。

公共交通機関では最寄りのJR岩沼駅かバスになる。いづれも、SUGOまで歩いて行けるような場所ではない。

おおよその料金を調べて、スクール参加費よりはるかに高いタクシーを利用する決意をした。

誰かに送ってもらうにしても、私が再びオートバイに乗ると言える相手は誰もいない。

それだけ本気だったということだ。

これからまたバイクのある生活をするため、ではなく、ただもう一度だけ乗ってみたい。それだけが目的だった。

もう何年も前に、ハーレー試乗で気が済んだはずが、その後も頭の中からバイクのことが消えて無くならない。

バイクへの思いを吐き出すために始めたブログも、ずっと続いていて、消えるどころかバイクへの拘りを維持するのに役立つばかりだった。


もう一度乗るしかない

もう一度乗るしかない


こうなったら、もう一度乗るしかない。



一度乗って、自分の技量の無さや老いによる衰えにがっかりしたら、それできっぱり忘れるだろう。そうも思った。

今では「ヤマハバイクレッスン」と名前を変えたらしいが、当時は「大人のバイクスクール」と言っていた。

バイクはレンタル、ヘルメットその他装備もレンタル可、費用もとてもリーズナブルだった。

もちろん年齢制限もなく、ホームページを見た感じでは、自分より高齢の女性の参加も見られた。

内容を知るほどに、参加の壁は取り払われて行った。ネットで申し込み、抽選の結果を待った。

当選だった。開催当日が楽しみで仕方がないと同時に、自信の無さからくる不安も募っていった。


いざ、SUGOへ

いざ、SUGOへ

2019年9月某日。

予約していたタクシーに乗り、約30分。

タクシードライバーに、SUGOへ行くこと、高齢でバイクレッスンに参加することなど話し、驚かれ、激励された。

細い山道を奥へ奥へと進む。JR駅からも遠い。とても不便な場所にある。



好天に恵まれ、バイク女子時代に何度かイベントで訪れたサーキットに心が躍る。エンジンの音が響き渡っていた。

会場に着くと、まだ開催時間には早く、インストラクター達がコースづくりに忙しそうだった。

緊張とワクワクの入り混じる室内。自己紹介などもあり、最高齢ということが判明した。

参加者は様々で、立派なバイクを所有しながらも何年もガレージから出せないという女性、普段乗っているが自信が無いという男性、すでにこなれたライディングスタイルの若い男女、リターンライダー等々。

共通していたのは、皆楽しそうだったこと。

レンタルバイクは、私が乗った中で過去一コンパクトでスレンダーなトリッカー。

セローだと思いこんで期待していたので、ちょっとがっかりだ。しかし、足つきも取り回しも楽だから緊張感が薄れた。



乗れてるじゃないですか!

大人のバイクスクール

インストラクターの説明はとてもわかりやすく、指導も適切で、そして何より人柄が良い人ばかりだった。

過去にプロのライダーだった人も多いとのこと。バイクが好きでたまらない、バイクに乗る人を見るのが嬉しい、そんな感じが伝わってくる。良い表情をした人ばかりだ。



インストラクターが、カーブをクリアして加速をしてきた私をコース脇に止めて言った。

「乗れてるじゃないですか!」

笑うことをしばらく忘れていた私は、ひきつった笑顔で答えた。

「そうですか~?」



そうなるともう楽しくてたまらない。ほんのちょっと自信を得て、さらに加速し、バイクを倒す。

ただ、ポールの周りをくるくる回るあれは、やはり苦手だった。終始笑ってごまかした。足つきの良さに救われて転倒することは一度もなかったが。

緊張しながらも、とても楽しく充実した時間を過ごして、私は大いに満足した。

温泉旅行に行けてしまうようなタクシー代も惜しくなかった。

基本のスケジュールが終了し、お弁当をいただく。

希望者はその後、近場のツーリングへと出発するのだった。

○○さん、ツーリングどうですか?とインストラクターに声を掛けられたが、公道を走る自信は全く無い。


大人のバイクスクールを終えて

バイクに乗ろうという気持ちは、とりあえず消えたが


予約したタクシーが迎えに来る時間が近づいていたこともあり、もうこれで十分ですと返事をした。

開催者側が、タクシー利用で来たと知って料金を聞かれ、とても恐縮されていた。帰りは送ってくれるとも言って下さったが、すでに迎えのタクシーが来ていた。

その後、楽しかった思いの余韻に浸る日々が続いたが、バイク復帰の目標は生まれないまま年月が過ぎる。

またバイクに乗ろうという気持ちは、とりあえず消えた。


しかし「乗れてるじゃないですか!」というインストラクターの一言が、その後もずっと頭の中にピン止めされることになったのは、言うまでもない。

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